こんな能力(ちから)なんていらなかった



「そんな顔するなよ……メールするから」

「え、いいよ……仕事忙しいんでしょ」

「お前はそんなこと気にしなくていいんだよ」


 額を軽く叩かれる。


「忙しくたってそれぐらいはできるからな」


 優羽はじゃあ、と言葉を紡ぐ。


「何で忙しいからとか言ってメール送ってくんな的なメール送ってきたの?」

「あー……あれは俺の問題。悪かったな」


 紫音は優羽の髪を撫でながら申し訳なさそうな顔をした。


「別にいいよ……連絡くれれば」

「本当にお前は可愛いな」


 笑われて顔が赤くなる。


「もっとお前は望んでもいいんだよ?分かってんのか?」

「?」


 分かってないな、これは。と紫音は笑うと軽く頭を叩く。
 立ち上がった紫音はもうどうやっても引きとめられないだろう。


「玄関まで送る……」

「いいよ、じゃあな」

「……うん、また」


 立ち上がりかけた腰をおろし、ベッドに腰掛けたまま手を振ると紫音は優しい笑みを残して去って行った。

 そうなると、寂しくなる自分の部屋。


 ベッドに寝転んでいると奈々が猫の姿で入ってきた。


「奈々が紫音に頼んだの?」

「にゃー」

「無理矢理頼んだのね?」

「にゃー」