「タロちゃん」こと田口浩平(たぐちこうへい)はメイと同じ言語学科の、一つ上の先輩。縦にも横にも大きな体躯の割に、面倒見がよく、良く回る口ぶり。講義でいつも手を挙げ、後輩とキャッチボールをし、他の先輩にも可愛がられている人だった。



末っ子のメイが彼に懐くのに、時間はかからなかった。



「3ヶ月前までは、私達、1年生だったじゃん?
タロちゃんは『後輩を可愛がる俺』が好きなんだよ。だからさ、うちら2年生になって、1年生で入ってきたコにも、甘えるの上手なコが居てさ、それで」

「タロちゃんが1年生を構いにいくの、メイは面白くないんでしょ?」

「…………ですかね?」


それ以外に無いだろーが、というハルカの声が、ばつの悪そうな顔をしたメイに長細い居酒屋メニューの向こう側から届いた。