案の定、そんな私に怒る橘さん。


「ごめんなさい。...なんか嬉しくなっちゃって」


「えっ?」


だってそうでしょ?


「私達、最初はお互いのこと嫌い合っていたのにいつの間にかこんな親友になっちゃったんだなーって」


同期入社でライバルで。顔を会わせればいつも口喧嘩していたのに。


「嬉しいなって思ったの。...私を頼ってきてくれたことが」


家を飛び出して、光太君を連れて頼ってきてくれたことが嬉しいなって思える。


「私、自分でも気付かないうちに橘さんのこと、凄く大好きになっちゃってたみたい」


「なっ...!」


橘さんの顔はより一層真っ赤になる。


翔ちゃんや桜子より付き合いは短いのにな。なんでだろう。自分でも不思議に思う。


「三十二歳にもなって何恥ずかしいこと平気で言ってるのよ!聞いてるこっちが恥ずかしいわ!悪いけど先に寝かせてもらうわよ!おやすみなさい!」


一気に言うと橘さんはそのまま光太君が寝ている寝室へと行ってしまった。


そんな橘さんがやっぱり可愛くておかしくて笑わずにはいられない。


「おやすみなさい、橘さん...」


詳しいことは明日聞けばいいよね?


「私も寝ようかな」


アルコールも入ってるし、急に睡魔が襲ってきた。


「...そういえば私、どこで寝よう」


結局この日の夜はソファーで眠りに就いた。


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「っぎゃー!!」


「わわっ!?」


突然聞こえてきた泣き声に飛び起きると、目の前にはいまだに泣いている光太君。


「ほーら、光太。やっと起きてくれたわよ?」


「橘さん...」

驚く私を満足気に見る橘さんに、昨日の記憶が蘇る。


あっ...そうだった。昨日泊まったんだっけ。
まだ夢心地のまま時計を見ると朝の七時半。


「えっ!?まだ七時半なの?」

せっかくの休日なのに!!


「あら。もう!七時半でしょ?」


そう言いながら橘さんは光太君を泣き止ませる。


「あなた休日はいつもゆっくりと寝ているの?不健康ね」


「不健康って..。仕方ないじゃない。眠いんだもん」


あと少しだけ寝ようとソファーにまた寝転び布団を掛ける。


「ダメよ起きなさい」


そう言って無理矢理私から布団を奪う橘さん。


「休みだからって遅くまで寝ていて朝御飯とお昼御飯が一緒になっちゃってるんじゃなくて?身体に良くないわよ」


「うっ...」


そんな朝から痛いこと言わなくても...。