だけどそんな笑顔を見せたのはほんの一瞬で、なぜか表情が激変する。

「ちょっと桜子~?」

久々に見た怒りに満ち溢れた菜々子の顔。
思わず後退りしてしまうほどの迫力に、言葉が出てこない。

「言いたいことが沢山あるの!取り敢えず場所を移しましょう」

「……はい」

そして有無を言わさぬ笑顔に、そう返事するしかなかった。

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「はーっ!!やっぱ仕事終わりのビールは美味しいね!!」

あれから菜々子と二人、やってきたのはよく来る居酒屋。
そして早速ビールを注文すると、一気に半分飲み干した菜々子。
そんな菜々子を横目に見ながらも、ビールをちびちびと飲む。
いつもだったら、豪快に一気飲みしてぇところだけど、今日ばかりはそんな気分になれない。
だって菜々子がわざわざ私の会社にまで来た理由なんて、ただ一つしかねぇと思うから。
いつその言葉が言われるかと思うと、さっきから怖くて堪らなかった。
だけど、一向にそんな気配もなく、呑気に注文した漬物を頬張る菜々子に気が抜ける。

「桜子も食べなよ。すごく美味しいよ?」

「あっ、あぁ……」

勧められるがまま、箸でとり口に頬張る。
そんな私を菜々子はニコニコしながら見ているだけだった。