すると彼女はすぐにシートベルトを外した。
そして笑顔で俺を見る。

「……サンキュ。送ってもらって助かった!ごめんな?こんな恰好で車に乗っち待って……」

申し訳なさそうに話す彼女。その笑顔を見ているのがなぜか辛い――。
でもここで俺が、この感情を顔に出すわけにはいかない……。
そう言い聞かせ、無理にでも笑顔を作る。

「いいえ。こちらこそすみませんでした。……こんな雨の中、待たせてしまって」

そう伝えると、彼女は『違う』と言わんばかりに、慌てて言葉を口にした。

「いいよ、もう!それに、和也君はちゃんと来てくれたじゃん?……来てくれただけで、すっげ嬉しかったからさ!だからそんな気にすんなって!」

そう言っていつものように、明るく俺の肩を叩く。

「五條さん……」

そんな彼女の姿にまた胸が締め付けられる。
五條さんあ今までに出逢ったことがないくらい、純粋で素直な人。
そんな彼女に自分の気持ちを伝えて、傷つけたくなかった。
……でもきっと、言わないでいた方がもっと彼女を傷つけることになる。

「待って下さい!!」

そのまま俺の車を降りようとする彼女を、慌てて呼び止める。
いつになく大きな声で呼んでしまい、彼女は驚いたようにすぐさま振り返り、俺を見つめてきた。

「……和也、君?」