「何言ってんだよっ!私がどれだけ心配したと思ってんだよっ!!……マジでどれだけ心配したことかっ……!」

「五條さん……」

そこまで言うと、言葉を詰まらせる彼女を見て、本当に俺のことを心配してくれていたんだってことが、嫌でも伝わってくる。
それに、濡れてボロボロになってしまっているけれど、今日のためにいつもはしないオシャレをしてきたんだろ?
……きっと俺に見せてくれるために……。

そう思うと、胸が激しく痛んでくる。
本当、やめて欲しい。
こうやって俺の気持ちをかき乱すのは……。

だから嫌だったんだ。
だから俺は、彼女より年上のくせに、いつも敬語を使っていた。
そうすることで、どこかで彼女との関係に境界線を張っていたんだ。なのに、その境界線を破ろうとしないで欲しい……。

自分を落ち着かせるように、大きく息を吐く。

「……遅れてしまい、すみませんでした。実は帰る前にトラブルがありまして……。とても連絡している暇がなかったんです」

そう言って彼女に頭を下げる。
いつもと雰囲気が違う彼女を見ているのは、辛かったから……。

どうにか弁解し、彼女の腕を引く。

「とにかく行きましょう」

「え……わっ!おいっ!?どこ行くんだよ!」

無理矢理、彼女の腕を引きながら車を駐車している場所を目指す。
これ以上彼女が濡れないよう、大股歩きで。

「そんな恰好でどこに行けると言うんですか?」

「……は?」

歩きながらも彼女に訪ねると、随分と間抜けな返事が返ってきた。