和也君と会うときは、決まって居酒屋だった。
それにやっぱ酒の力を借りねぇと、和也君と話せなそうだし。

「今度会うときは、菜々子おすすめの店でも行ってみたら?」

ニヤニヤ笑いながらそう話す翔太。

「……あぁ」

素直に頷くのが嫌でぶっきらぼうに返事を返すものの、翔太と菜々子はそんな私の心情なんてお見通しなのか、二人顔を見合わせては、笑った。

「……んだよ、二人して笑いやがって。感じわりぃんだけど」

わざとオーバーにふて腐れると、すぐに謝ってくる菜々子。

「ごめんごめん!そんな悪気があってじゃないから」

「そうだよ。つーか気になったんだけど、『和也君』なんて呼んでんだろ?桜子はなんて呼ばれてるんだよ」

「……は?」

翔太にまさかそんなことを聞かれると思っていなかった私は、ずいぶんと間抜けな声を出してしまった。

「あっ!それ私も気になったー!!なんて呼ばれているの!?」

翔太同様、興味津々な顔しやがる菜々子。

「バッ、バーカ!!そんなこと言うわけねぇだろ!?」

「別にいいじゃん。こうやって桜子の相談に乗ってやってんだからさ」

「そうだよー!聞かせてよ」

焦らされてか、さらに興味が増した様子の二人。
そんな二人の視線に耐えられなくなり、椅子から勢いよく立ち上がった。