「だけど、まぁ…。むちゃくちゃな人だけど、尊敬できる面もある、かな？……だから桜子が副社長を好きになった気持ち、ちょっと分かる。それに桜子の恋愛、本当に頑張って欲しいし」

「……菜々子」

そう言って笑う菜々子の笑顔は、昔から変わらない。
何度この笑顔に癒されて、元気と勇気をもらってきただろうか。

「桜子はさ、押しすぎなんじゃねぇの？たまには引いてみるのもいいんじゃないか？」

「引くって言ったって…。引いたらきっともう会ってくれねぇよ」

翔太の言うように、『恋愛には駆け引きも大切だ』みたいな言葉をよく聞くけど、彼には無意味だと思う。

「今だって私が半ば強引に誘って会ってくれているようなもんだし。……マジどうやったら好きになってくれんだよー……」

つい漏れてしまう愚痴。

菜々子と東野さんの結婚式で再会してから、ずっと私がしつこく誘って渋々会ってくれているようなもんだ。
でもそうでもしないと、きっと会ってくれねぇし。

「……あのさ、桜子。たまにはさ居酒屋ばかりじゃなくて、ちょっと雰囲気のあるオシャレなお店に行ってみたら？」

「え…？」

オシャレなお店？

「話を聞いてると、いつも副社長と会うときは居酒屋なんでしょ？だったらたまには雰囲気を変えてみたらいいんじゃないかな？」

「いいじゃん、それ！たしかにいつも居酒屋とか色気ねぇよな」

「うっせなぁ。仕方ねぇだろ！？居酒屋しか思い浮かばなかったんだから！」

翔太に反論するも、確かに菜々子の言う通りなのかもしれない。