だけどそんな私の気持ちなんてきっと大貫さんには伝わっていない。
私が返事を返すと、話し出した。

「…数年前、私櫻田さんに駅で圭吾のことをお願いしますって言ったのを覚えてますか？」

「はい…」

勿論覚えている。忘れたくても忘れられるわけないよ。

「あの時の私には、変なプライドがあって剛から圭吾と櫻田さんが付き合ってるって聞いても、そこで頑張れなかったんです。急にいなくなった私も悪い。…それに圭吾に奈津美はいい女だったって思われたいって思っちゃって」

そう言って笑う大貫さん。

「…でもきっとそんな私に櫻田さんは気付いていたんでしょ？」

「……はい」

私だけじゃなくて誰だって分かるよ。あんなに無理して笑って去っていく大貫さんを見たら。

「昔からダメなんですよ。自分ではその時はいいと思っていたことが、後に後悔したりすることが多くて。…あの時の私も後悔しました。ううん、圭吾のことでは後悔ばかりかもしれない。…櫻田さんは昔の圭吾のこと知ってます？」

「…だいぶ女性関係が激しかったこと、ですか？」

「あはは！そうそう、それです」

正直最初に聞いたときは信じられなかったけど。