「すみません!お疲れ様です!」

やだっ!
なに仕事中にぼーっとしちゃってるのよ!

慌てて資料を手渡すが、なぜか相手は動かないまま。
恥ずかしくて顔が見れなかったが、なぜか動かない相手を不思議に思い顔を上げる。

「……大貫さん」

一瞬心臓が止まってしまうかと思った。
 
それは大貫さんも同じだったようで、ただじっと私を見つめたまま固まっている。

久し振りに見る大貫さんだけど、相変わらず可愛らしい風貌で、下手したら私より幼く見えるかもしれない。

だけどなんで大貫さんがここに?資料には大貫さんの名前なんてなかったはずなのに。それとも私が見落としてしまっただけ?

そんなことを思いながらも私も大貫さんを見つめていると、大貫さんは笑った。

「…お久し振りです。まさかここでお会いできるとは思いませんでした」

「…はい」

言葉が続かない。だってなんて言えばいいの?どんな顔して話せばいいの?
そんなの分かるわけないじゃない。

「失礼します」

「あっ、はい!」

そんな私とは違い大貫さんは大人で、笑って挨拶してくれて。
そのまま会場の中へと入っていった。

突然目の前に現れた大貫さんに、私の心臓はいまだにばくばくとうるさい。

だって正直もう二度と会うことはないと思っていた人だったから。