なっ…!なにそれ!!

「…悪いですけど、私は結婚しても仕事を辞めるつもりなんて全くありませんから!」

冗談じゃない。いくら圭吾さんの頼みだからってこればかりは譲れない。

「ちゃんと俺の話聞いていてくれたよな?」

「勿論です。…でもそれとこれとは話が別ですよね?出戻りの私を迎えてくれたみんなに今更迷惑なんてかけたくないですし、中途半端なまま辞めてくありません!なにより今の仕事が楽しいんです」

「でも…!」

「それに圭吾さんだって賛成してくれて応援してくれましたよね!?あれは嘘だったんですか!?」

怒りのあまり大きな声が出てしまった。

「…第一圭吾さんが私を信じてくれていれば、そんな辞めろなんて言いませんよね…?」

これが一番伝えたかった言葉。
だってそうでしょ?私の気持ちを信じてくれていれば、そんなこと言わないでしょ?…そんなこと言うってことは、私のこと信じてくれていないからなんでしょ?

そう思えば思うほど目頭が熱くなっていく。

「…信じているよ、ちゃんと。…でも心配するのは当たり前だろ?今日みたいに男が菜々子に触れるのかと思うと嫌なんだ。菜々子の仕事に対する気持ちも分かっている。……ならせめて副社長の秘書じゃない仕事をしてくれないか?」

言葉が出なかった。
確かに私だって圭吾さんと大貫さんが一緒に仕事をするってなった時、不安で心配で。そして嫌な気持ちでいっぱいだった。…でも今はあの時とは違う。

「圭吾さん…私達、結婚するんですよね?…昔とは違いますよね?」

これからも一緒に生きていくって決めたのに、そんな理由で仕事を辞めろって言うの?

「それはそうだけど…。とにかく嫌なんだ。分かってほしい」