君が好き。2～大好きな彼と結婚する方法～

「バカね、冗談のわけないじゃない。…どうするのよ、また面倒な人に好かれちゃって」

ゆっくり歩き出した橘さんに続いて私も給湯室に入る。

「…でもやっぱりそんなわけないわよ。あの副社長よ？それについこの間お見合いしたばかりだし、とくに断りの連絡とかないし…」

「あなたそれ本気で言ってるの？絶対副社長はあなたのこと好きよ。…ちゃんと危機感持ちなさいよね。普通に考えたら分かることじゃない」

そう言いながらも慣れた手つきで珈琲の準備を進める橘さん。

「どうにかしなさいよね。…これは私の勘だけど、東野さんも副社長の気持ち気付いているんじゃないかしら」

「…まっさかぁ」

そんなわけないじゃない。だって私圭吾さんにそんなこと一言も言ってないし、第一私でさえそんなこと信じられないでいるのに。

「とにかく、副社長はあなたがちゃんとどうにかしなさいよね。…さっかくうまくいってるのに、ここにきて結婚はなくなったなんて、やめてちょうだいよ」

縁起でもない！

「そんなわけないじゃない！…いいわよ、ちゃんとするわよ」

聞いてやろうじゃない。きっといつものように笑ってバカにされるに決まっているわよ。

「…結婚が破断にならないよう祈っているわ」

最後に捨て台詞を吐き、珈琲を乗せたトレーを持ち給湯室を出ていく副社長。

「…だから違うって言ってるのに…」

確かにちょっとだけそんなことあるんじゃないかと思ったことはあったわよ？
でもそう考えれば考えるほどあり得ないのよ。あの副社長が私を好き…とか。

うん。考えただけでもあり得ない。

「あ…私も行かないと」

橘さんが戻ってからだいぶ時間が経っている。