「ごめんね?見ちゃったんだ。…櫻田さんが謹慎中に会社にきた日」

菜々子が謹慎中って…まさか。

副社長を見つめると、あのいつもの笑顔は消えていた。

「…櫻田さんって最初から不思議だったんだよね。橘さんの推薦だって聞いていたから同じような子だと思っていたら全然違って」

そう言うと俺から視線を逸らし、窓の方へと向かっていく。

「面白い子だなって思っていただけだったんだけどな。…いつの間にか一緒にいると本当に楽しくて、ついからかったりしちゃって」

ちょっと待て。…頭がついていかない。

「あの日もね、櫻田さんの顔が見たくなって俺が呼び出したんだ。…部屋を出て行った後、たまには一緒に食事にと思って探しにいってみたら、東野君がいた」

…見られていたのか?あの時。

「それで気付いちゃったんだよね。そっか。…俺、櫻田さんが好きなんだって」

そう言うとまたこちらを向き、俺を見つめてくる副社長。

「櫻田さんに恋人がいるってことは指輪を見て気付いていたけど、まさか東野君だとは思いもしなかったよ。…だってさ東野君女嫌いだったし、それに俺はてっきり大貫さんがいるから海外への異動もすんなりOKしてくれたとばかり思っていたからさ。…なに?大貫さんとうまくいかなかったから、次は櫻田さんなの?」