まだ肌寒い三月なのに桜は春爛漫、と咲いていた
「うー・・・さ、寒い・・・」
冬の制服ではまだこの季節は寒かった、いや寒すぎる!
私は園崎悠里、今日この聖ロベライト学院を卒業して府立の医学大学に入学することが決まっている。
「もうこの桜も見られないんだなぁ・・」
私は何故、屋内にいないんだろう
友達を待っているんだった。
「悠里ー!ごめんー!待たせちゃったね!」
綺麗な赤髪のポニーテールを揺らしながら走ってきた子、
この子が私の親友、三浦茉莉亜。
彼女は国内でも有数の財閥のお嬢様でスポーツも万能な出来た子だ。
「遅い。遅い遅い遅い!すっごく寒かったんだからね!・・・」
私の顔が般若にも近いほど怒っているように見えたんだろうか、
茉莉亜は必死に謝りだした。
いつもそうだ。私は表情がいつも暗い。
この三年間、特にイライラしているわけでもないのに
怒ってる、とか雰囲気が悪いと随分陰口を叩かれたものだった。
「・・・・怒ってる、よね?」
「怒ってないよ。ただ笑えないだけ。」
「そっか・・・。ごめんね、悠里」
「もう、謝らないで。もう三年もの付き合いでしょ?」
「そだね。うん。」
「ほら、帰ろ」
私達二人は歩き出した。
桜、か。私は桜を見て立ち止まってしまった。
「どしたー?。ん?桜・・・?」
「・・・・うん」
桜には一つ思い出がある。初恋、と言ってもいい。
私は昔、あることにトラウマをもって声が出なくなったことがある。
そんなとき、私にはただひとり心を許せる人がいた
「・・・・先生」
「・・にゅにゅにゅ?あれれー?もしやもしや??」
「なによ、もう。」
「もしや、桜に思い出が?」
こういうとき、茉莉亜は感がいい
「まぁね」
「もしかした、初恋、とか???」
訂正しよう、野生の感がはたらいているだけだった
「うん、まぁね」
「しりたーいっ!」
・・・もう一度訂正、野次馬根性が凄い
「わかった、ケーキ奢ってくれるなら喋ってもいいよ」
茉莉亜だったらここで引き下がるはず。
このあとは普通にご飯でも食べてプリクラとって帰ろう。
梅田がいいかな、それとも天王寺?いや、難波も捨てがたい
「駅前の商店街にいい喫茶店があるんだ。そこでいい?」
「うん。さ、帰ろう!・・・・え?」
今なんて?あの茉莉亜がおごる・・・?
「ほらぁ、はやくっ!」
やばい、今日は夜まで帰られなさそう・・!


第一話
ドタバタはお茶菓子を添えて