「ありがと。」
女は小さく笑って、花壇に目を向けた。
途端、俺の心臓が跳ねだした。
何だ、何だこれ。この年になって動悸か?動悸なのか、これは。
それともアレか、発作か?........いや、俺にそんな持病はない。
とりあえず落ち着け、俺。
深呼吸だ、深呼吸。
スー、ハー、と深呼吸をする。
「何してんの?やっぱ障害者?」
首をかしげ、握り飯を頬張る女は、再び俺を障害者扱いしやがった。
その瞬間、俺の怒りメーターがMAXに達した。
「てめえ.....俺を誰だと思ってんだ」
今日一番の低い声。
寝起きより低い。
「城木七瀬でしょ、不良の。」
女は清々しい表情でそう言った。
は?俺が誰かわからなくて、あんな態度とったんじゃないのか?
「あれ、違った?」
「.....ちがくねえ、けど」
意外な反応に、少し困った。
いや、知ってたのか?
つーか知ってるならなんであんな態度とったんだ?

