「んじゃ、俺は教室もどるねー!」
ブンブンと手を振って、教室に戻っていく晴人。
一体何をしに来たんだ。
「城木君はいいの?」
「.........制服乾いてねえ。」
振り向き際、小路の黒くて長い髪が、かぜになびく。
その姿が、妙に色っぽく、ドキッとした。
.............いやいやいや。
何ドキッとしてんだ、俺。
意味分かんねえ。
「..............それ、何?」
気を紛らわせるため、小路に話しかける。
この俺が、女に話しかけるなんて滅多にないんだからな。
感謝しろよ。
「これ?向日葵だよ。」
芽が生え始めたそれを、指差す。
「夏が来れば、ここ一面、向日葵だらけなんだ。」
「..........向日葵、好きなのか?」
「うん、好き。」
ホースに繋がる蛇口を閉め、水を止める。
「花本体も好きだけど.....特に花言葉が好きなんだよね。」
花言葉......?
向日葵の花言葉って確か......
「『あこがれ』とか『熱愛』........だよな?」
「そうだね。それもあるんだけど..........」
ホースをその場に置いて、俺の隣に座る小路。
一瞬香った甘い匂いが俺の鼻を刺激する。
「『貴方だけを見つめる』」