魅惑の果実

ケータイを見ると、明日香から鬼の様に電話とメールが入っていた。


“言えた?”から始まり、“大丈夫?”“もめてるの!?”と次々とメールがきていた。


こんなに心配してくれてたんだ。


私は明日香に電話した。



「もしもし!? 大丈夫!? 今どこ!?」



ワンコールもしないうちに明日香の声がしてビックリした。


それも声が大きい。



「なんとか大丈夫。 心配かけてごめんね。 今桐生さんの家にいるよ」

「え!? 何で!? どうなってんの!?」

「会って話した方が早いかも。 今何処にいるの?」

「今寮だよ!! 心配になって見に来ちゃった」

「明日香、ありがとう。 今から寮に戻るから待っててくれる?」

「うん、わかった。 待ってるね」



電話を切り、バッグの中に放り投げた。


帰るって言ったけど、洋服どうしよ……。


ウロウロしながら考えていると、テーブルの上にメモ用紙が置かれていた。



“客室のクローゼットの中に服が入っている。 好きな物を着るといい”



綺麗な字。


バッグの中からボールペンを出し、メモ用紙の隅に“ありがとう”と書いた。