黒いスーツを着た怖い感じの人たちがゾロゾロと近づいてきた。


な、何!?


桐生さんの身体にぎゅっとしがみついた。



「後のことは任せる」

「畏まりました」



……へ?


知り合い?


感じからして部下の方々?


よく分からないまま私は桐生さんと一緒に車に乗り込んだ。



「どちらに向かいますか?」

「マンションに向かってくれ」

「畏まりました」



え……マンションって事は、桐生さんのお家……?



「いいの?」

「帰れと行っても帰らないんだろう?」



てっきり無理矢理にでも家に帰されると思ってたのに……。


たまにはワガママを言ってみるもんだな。


初めて乗る桐生さんの車。


広くていい香りがする。



「お前は現金な奴だな」

「え……?」

「子供みたいに泣いていたかと思えば、今は嬉しそうな顔をしている」



え!?


嘘!?


窓ガラスで自分の顔を確認した。


あ……手で顔につい傷に触れ、気分が落ち込む。


ボロボロ……。



「美月、こっちを向け」

「……イヤ」



もう見られてるけど、これ以上こんな顔を桐生さんに見せたくない。