魅惑の果実

ヒリヒリする腕を見ると、縄の後がくっきりとついていた。


なんか、全身が痛い。



「桐生さんは……いつもこんな事してるの? 今までに何度も人を……」



「撃ってきたの?」と言葉がもう出てこなかった。


桐生さんの顔を見上げ、目を見つめた。


お願いだから、違うって言ってよ……。


お願いだから……。



「何を期待している? 俺はお前が望んでいるような人間ではない」

「うそ……そんなの嘘だよ!!」

「震えているな」

「っ!?」



桐生さんの長くて男らしい指が肩に触れ、ビクッとなった。


この指で何度引きがねを引いてきたの?


何度人を傷付けてきたの?



「送らせる。 家についたら、俺の事は忘れろ」



えっ……?


何言ってんの?



「どういう意味?」

「言葉の通りだ」



蓮見さんが運転する車が目の前に止まり、桐生さんはクルッと背中を向けた。


頭の中が真っ白になった。


気付けば身体が勝手に動いていた。


桐生さんの背中にしがみつき、顔を埋めた。



「っ……ヤダ……そ、んなの……イヤっっ……」