小西さんが帰ってからは色んな席に座った。


ヘルプだったり、指名客だったり、とにかく色んな席に座った。


上がる時間迄後三十分。


このまま何事もなく終わればいいな。



「莉乃」



トイレで気合を入れ直し、フロアーに出ると店長に呼び止められた。



「何ですか?」



嫌な予感しかしない……。



「場内指名入ったから残業してくれる?」



えぇ!?


やだぁぁぁ〜!!



「……分かりました。 でもそんな遅く迄は無理ですからね」



入店してまだペーペーな私が、そんなワガママ言えるわけない。


店長に席に案内され、引きつりそうになる顔で必死に笑顔を作った。



「莉乃さんです」

「場内頂き有難うございます」

「おぉ!! 近くで見ると更に可愛いじゃねぇか」



私、輩は苦手なのにぃ〜……!!


マジ最悪!!


私に拒否権はないので、これも仕事なんだからと自分に言い聞かせ、客の隣に座った。



「もっと近くに来いよ」

「わっ……!」



腕を無理矢理引かれてチョー密着。


キモイ!!


てか何なの!?


この無駄に鍛えられてて硬い身体に無駄に黒い肌は!!


黒くなり過ぎでしょ……何目指してんのよ……。