魅惑の果実

どうして、自分で危ない道を選んでしまったんだろう。


今すぐにでも逃げ出したいのに、どうして出会ったばかりの澪を庇ったんだろう。


好きな人に売られてしまう澪の姿を見たくなかったからかな?


自分の事なのに、いくら考えてもわからなかった。


なんか、最近こういうの多いな、私。


それにしても命を捨てるような事をして、私はバカの中のバカかもしれない。


明日香……美香ちゃん……っ。


こんな時に浮かぶのは家族の顔じゃなかった。


いつもそばにいてくれる人たちの顔ばかりが浮かぶ。


桐生さん……貴方に好きって言っておけば良かった。


伝えたい……っ。


涙で視界がボヤける。


小西さんが足を止めた場所は建物の外だった。


真っ暗……夜、だったんだ……。



「桐生に俺の何を話した」

「いつも酔っ払ってるから覚えてない。 直接本人に聞きなよ」

「チッ、ムカつく女だな」



これが小西さんの本性。


これに気付かずにいい人だと思ってた私って、どんだけ人を見る目がないんだろう。


情けない。