魅惑の果実

足を蹴り上げられ、振りほどかれないよう必死にしがみついた。



「いい加減にしろよ!!」

「いっ……」



蹴り飛ばされ壁で背中を打った。


衝撃で一瞬息が出来なかった。



「私がここにいる限り桐生さんは探してくれる!! 見つけてくれる!! 私がいたら言い訳できないよね!? 私の方を先に処分した方が身の為だと思うけど!?」



ハッタリだった。


桐生さんが私のことを探してくれてる可能性はきっと低い。


だけど効果はあったのか、小西さんの顔色が変わった。



「桐生とは顔見知り程度だろう? それで奴が莉乃を探すとは思えないな」

「意識を失う直前に話してたのは桐生さんだよ。 場所も聞かれたし、私の異変にも気付いてくれてた。 それに貴方の事を勘ぐってた」

「桐生が……俺を……?」



途端に青ざめた小西さんは、澪の腕を離すと、私の髪の毛を掴み上げた。


立ち上がると髪の毛を掴まれたまま引っ張られた。



「莉乃!!」

「澪!! 大丈夫!! 大丈夫だからね!!」



泣き叫ぶ澪に声を掛け、私は転けてしまわないよう必死に小西さんについて行った。