魅惑の果実

どのくらい時間が経ったか分からない。


もしかしたら日付けも変わってるかもしれない。


時計もなければ窓もない部屋。


時間の感覚がもうなくなっていた。


とにかく時間が経つのが凄く長く感じる。



ーガチャッ。



音がして顔を向けると、涼しい顔をした小西さんが立っていた。



「ここから出して下さい!!」

「莉乃はもう少しここでいい子にしてて」

「私だけじゃない!! みんなをここから出して下さっ! うっ……!」



髪の毛を掴み上げられ、痛みで顔が歪む。


私を見下ろす小西さんの目は冷たかった。



「大事な商品に傷をつけたくないんだ。 だから静かにしててくれるかな?」



背筋がゾクっと凍りつく。


怖い……。



「じゃあ行こうか」



小西さんが澪の腕を掴んだ。


澪は無理矢理立たされ、自由のきかない足を一生懸命動かしている。



「何? 本気で怒るよ?」



地べたに倒れ込み、小西さんの足首を掴むと、鋭い目で睨まれた。



「連れてくなら私にしなよ!!」

「莉乃!! 何言ってるの!?」

「全くだよ。 お客様は澪をご所望なんだよ。 自分の出番が回ってくるまで大人しくしていろ」