魅惑の果実

「小西と何処で出会ったの?」

「キャバクラ」
「キャバクラ」



澪と声が重なった。


驚いていると、澪は苦笑いを浮かべた。



「みんなそうみたい。 いい人だと思ってた自分が本当、バカみたい」

「私もそうだよ……優しくて紳士で、凄くいい人だって思ってた。 今でも信じられない……」

「そうだよね。 私もさ、未だにこれは悪い夢なんじゃないかって思うよ。小西は誰かに脅されてやむを得なくこんな事してるのかも……っていいように解釈しようとしたりさ……そんなわけないのに……」



ここにいる子達はみんな私と同じ被害者なんだ。


何かしらの訳があって心の隙につけ込まれたのかもしれない。



「凄く好きだった……こんな事されたのに、今でも顔を見たら許しちゃいそうで……本当、こんな自分が嫌になる」

「今でも、小西さんに気持ちがあるんだね」

「笑えるでしょ?」



私は首を横に振った。


笑えるわけない。



「きっとそれが好きって事だから……辛いよね……」



膝に顔を埋めて涙を流す澪の頭を、ぎこちない動作で撫でた。