魅惑の果実

涙が溢れて、止められなかった。


涙を拭うたび、腕を縛っている縄が頬に当たる。


微かに痛みを感じ、余計に涙を誘う。


私バカだ。


大バカだ。


大好きな桐生さんの言うことを聞かなかった罰だ。


私のためを思って言ってくれてたのに……っ。



「私は澪(みお)。 貴女名前は?」

「わ、たしは……莉乃……」

「いつまで一緒にいられるか分からないけど、宜しくね」

「そんな事いわないで……っ、大丈夫だよ!! 誰かが助けに来てくれるよ!!」

「私もね、最初はそう思ってた。 でも誰も来ないまま時間だけが過ぎて、人が減っていくの。 もう、変に希望を持ちたくない……」



澪は力なく笑った。


他の二人は痩せ細り、肩を寄せ合い眠っている。


私もこうなっちゃうのかな……桐生さんっ。



「頬っぺた赤くなっちゃったね」

「え、あ……」



頬に触れると、少し痛みが走った。


ヒリヒリする。