魅惑の果実

え……そんな……。


桐生さんが言ってたのはこういう事だったの?



「私が来たときはもう少し居たんだけど、一人ずついなくなってる」

「いなくなるって!? それどういう事!? 意味わかんない……っ」



涙が溢れてきた。


小西さんが悪い人だって、この状況になっても上手く飲み込めない。


この為に私とわざわざ付き合ったの?



「そこに見張りがいるでしょ」



女の子の視線を辿ると、鉄格子の外には体格のいい男の人が二人立っていた。


牢屋みたいな作りになっていることに気付き、ゾクっと身体が震えた。



「あの人たちが話してるのを聞いたんだけど、ここ、人身売買してるところみたいなんだよね」



人身売買?


じゃあ、いなくなった子達は……。



「売られていったって事……?」

「そうなるだろうね」

「そんなっ! どうして!? どうして私たちがこんな目に合わなきゃいけないの!?」

「わかんないよ!! そんなの……私にだって、わかんないよ……」



ショートカットの女の子は目に涙をため、グッと下唇を噛み締めた。


これは夢なんかじゃなく、現実なんだと改めて実感した。