「失礼致します」



暫くすると、店長が入ってきた。



「ワイングラ……」

「烏龍茶を一つ頼む」

「えぇ!? 誰が飲むの!?」

「莉乃!!」

「だって店長!! 桐生さん酷い〜!!」



桐生さんに頭を抱き寄せられ、言葉が出てこなくなった。


逞しい胸板が頬に当たる。



「取り敢えずソフトドリンクを飲め。 いいな?」

「…………」



低い声が耳元に響く。


私は無言のまま頷いた。


店長が出て行き、静まり返る部屋。


いつもはこんなに甘くないのに、桐生さんどうしちゃったの?


咲さんがいないから?


このまま桐生さんの胸の音を聞いていたい。



「お前が酔っ払っているところは初めて見るな」

「……そうだっけ?」



ほろ酔いの時ほど感情が不安定な時はない。


私が悪酔いしてるのは貴方の所為ですからね!!



「暫くこのままでいていい?」

「好きにしろ」

「うん、ありがとう」



この手を独り占めしたい。


この腕の中に飛び込む資格が欲しい。


想いばかりが募っていく。