魅惑の果実

手元にあった紙ナプキンを伶奈に手渡した。


化粧が取れないように涙を拭ってるけど、もう意味がない。



「涙だけじゃなくて、落ちた化粧も綺麗にしなよ」



ケータイの画面で自分の顔を確認した伶奈は、慌てて目の周りを綺麗にしている。



「結婚式は?」

「籍入れるけど、式を挙げるかは分かんない」

「うっそ!? 何で? 勿体無い!!」



ウェディングドレス着てみたかったけど、そんな時間もタイミングもなさそうだもんな。



「まぁ、機会があればやるよ」

「そっか。 それより仕事はどうすんの?」

「パートに切り替えようかなって思ってる」

「専業主婦じゃなくていいの? 働かなきゃ家計苦しいの?」

「ううん、私が働かなくても問題ないよ。 でも、出来れば帝を今の保育園に通わせてあげたいからさ」



親の都合でそこまで帝を振り回したくない。


せっかく保育園に友達も多いし、あまり帝の環境を変えたくないんだよね。



「あ、昼休み終わる! 仕事に戻ろう」

「今度ゆっくり話聞かせてよね!!」

「はいはい」