魅惑の果実

桐生さんにしてもらう腕枕。


逞しくて温かくて安心する。


帝がもう少し小さい頃は私がよく腕枕をしてあげていた。


だからなのか、今は自分が凄く子供になった様な気分だ。



「お前は俺の所為で色んなものを失っていたんだな」

「失ったものと同じくらい、大切なものを得たんだよ?」

「……帝か?」

「うん。 今月で4歳になるんだよ? まだ小さいけど、桐生さんに良く似てる」



帝の方がよく笑うけど、真剣にテレビを見ている時の横顔なんかは桐生さんにそっくり。


思い出すだけで頬が緩む。



「お前も桐生になるんだ。 いい加減呼び方を変えろ」

「え……?」



側にいるとは言ったけど、突然な事なのに結婚って……形上だけじゃなくて、ちゃんと私たちを受け入れてくれるの?


ヤダ……涙が……っ。


今日は久々に泣きすぎて涙腺が馬鹿になってるのかもしれない。



「今更結婚は嫌か?」

「っ……そんな事ないっ!! けど……本当にいいの……?」

「いいに決まっているだろう。 今まで寂しい思いをさせていた分、幸せにしてやる。 死ぬその時までお前と帝が笑っていられるように、俺が最善を尽くしてやる」

「桐生さ……政臣も一緒に幸せじゃないとイヤ」



政臣はフッと笑みをこぼすと私に優しいキスをした。