魅惑の果実

頭が上手く回らない。


さっきの出来事も夢だったんじゃないかと思う。



「ここに桐生を呼んだのはわざとだよ」

「どうしてっ、どうして……そんな事……」



今更会ったって何も変わらない。


ただ苦しい思いをするだけ。



「桐生はまだ美月ちゃんの事大事に想ってるよ」

「何言ってるんですか。 そんな訳ないじゃないですか!! 別れて一度も連絡ないんですよ!? その程度だったって事でしょう!?」



連絡が来たところでどうしようもなかった。


けど、どうして連絡くれなかったの?って、何度も思った。


桐生さんが連絡をしてくれても、してくれなくても、きっと私は同じ様な思いをグルグルと巡らせてた。


別れを切り出したのは私のくせに、矛盾してるって分かってる。


でもしょうがないじゃん。


答えが見つからないんだもん……。



「理由は桐生に直接聞けばいい」

「っ、今更聞く必要なんてありません……だって、私たちはもう住む世界が違うんですから!!」



涙が溢れ、咄嗟に俯いた。


ゴールドのドレスにポツポツと濡れて染みが広がっていく。