魅惑の果実

帝を寝かしつけ、一人の時間。


小さな音量でテレビを見ながらコーヒーを飲む。


戸棚から小さな四角い箱を取り出し中を見た。


返せなかった貰った指輪。


今でもこの指輪を貰った時の状況が鮮明に浮かぶ。


桐生さんは私のあげたプレゼントまだ持っててくれてるかな?


持ってるわけないか。


置き手紙をした日以来桐生さんからは一度も連絡がない。


私ばっかり好きだったのかな?


そう思うと未だに胸がチクリと痛む。


ここ暫くはこんなに感傷に浸る事はなかった。


原因は明らかだ。


今日咲さんと会ったから。


今が不幸だとは思ってない。


帝がいて、明日香や美羽、みんながいる。


それでも、ここに桐生さんも居てくれたかもしれないと思うと、やっぱり悲しく思う。



「あーダメダメ。 歯ぁ磨いて寝よっと」



指輪をしまい、食器を片し、寝る準備を始めた。


一晩眠ればきっとこんな気持ちも治るよね。


帝を起こしてしまわないようにそっとベッドに潜り込み、私は帝と向かい合って眠りについた。