「突き放されてからは凄く荒れちゃって……そんな時に今の主人と出会ったの。 彼に出会ってやっと気付けた。 桐生さんに対してただ執着してただけなんだって……」



何それ?


ヤダ……もう忘れた筈の怒りが込み上げてくる。


胸がムカムカする。



「私には関係ありませんから、そんな話をわざわざしに来て頂かなくて結構です」

「待って!」



席を立とうとしたら咲さんに手を掴まれた。



「何か?」

「結婚して、貴女に対して本当に申し訳ない事したって強く思うようになって……どうしても謝りたかったの」



この人はどこまで……っ。


咲さんの手を振り払い席を立った。



「私に対して悪いとかじゃなくて、自分の中の罪悪感を消したかっただけでしょう?」

「違うの! 私は本当に……」

「今更そんな言葉いらない。 何の意味もない。 そんな言葉で失ったものが戻ってくるわけでもない。 もう帰ってください。 そして二度と私の前に現れないで下さい」



その場を離れ、振り返る事はしなかった。


あの日から数年が過ぎて、母親になって、自分自身成長もしてる。


けど、笑顔を取り繕って「もういいんです」って言ってやれる程大人じゃない。