魅惑の果実

桐生さんと腕を組み、普段から綺麗な咲さんの顔は更に綺麗に見える。


すらっと背の高い桐生さん。


グラマラスで女性にしては背の高い咲さん。


高いヒールを履いているせいもあるだろうけど、桐生さんと咲さんは誰がどうみてもお似合いだと思う。


私が桐生さんの隣に並んだら、きっとちんちくりんに見えるんだろうな。



「もうお帰りになるんですか?」



咲さんの手前、敬語を使った。



「あぁ」

「今日はありがとうございました」



妙に咲さんの視線を感じて居心地が悪い。


私なんかを敵対視する必要ないのに……。


そう思いながら、自分で勝手に傷ついた。


会釈して、エレベーターに向かった。



「莉乃」



桐生さんに名前を呼ばれ、胸がトクンっと高鳴る。


ドキドキする胸に手を当て、普段どおりの表情を作り振り向いた。



「さっき見送っていた男はお前の客か?」

「はい、そうですけど……」

「名前は?」

「小西さんです。 お知り合いですか?」

「いや、気にするな」



そう言うと桐生さんは背を向け車に乗り込んでしまった。