魅惑の果実

うどんを小皿に少し取り分けてくれて、私はそれを恐る恐る口にした。



「どう?」

「……少しずつなら大丈夫そう」

「あー良かった」



ホッと胸を撫で下ろす明日香を見て、笑ってしまった。


凄く心配かけちゃってるな。



「やっと笑ったぁ〜」

「え?」

「しょうがないけどさ、昨日からずっと暗い顔してたから安心した」



そんなに顔に出てたかな?


暫くは桐生さんと会うのは控えた方が良さそう。



「それで、どうするの?」

「……産みたい」



怖くて逃げたい。


産婦人科に行く前は、心のどこかで子供ができてても、おろせば何事もなかったかの様に過ごせるんじゃないかって思ってた。


でも、エコー写真を見ていたら段々とそれでいいのかなって思った。


この子を産むって事は私の人生が大きく変わるって事。


将来の夢も、行きたかった大学もきっともう厳しい。


辛いけど、この子をおろしたら、それ以上に辛い思いをする……そんな気がする。