魅惑の果実

「美月!!」



三十分程経って、明日香が息を切らしながら来てくれた。


ギュッと抱きしめられ、涙が溢れた。



「体調は?」

「今は平気……」

「そっか、良かった」



体を離した明日香は向かいの席に座ると、ドリンクバーを注文した。



「何も食べないの?」

「だって、食べ物の匂いとかキツイでしょ?」



私の事、考えてくれたんだ。



「ありがとう。 でもマスク着けてるし大丈夫だよ」

「そう? じゃあなるべくにおいが無いやつにする。 美月こそ食べなきゃダメだよ」

「……でも……」



またたの吐き気に襲われたらと思うと、怖くて食べ物に手をつけられなかった。


身体に悪いとかそんな事はよく分かってる。


でも勇気がでない。



「私の頼んだやつちょっと食べてみて、大丈夫そうなら頼みなよ」

「うん、そうする」



明日香は追加でうどんを注文した。


いつもはハンバーグとかトンカツとかお肉系を頼むから、ちょっと申し訳なく思った。