「あのさ、美月……」

「何?」



いつになく真剣な表情の明日香。


こっちまで身構えてしまう。



「生理は?」

「へ? 生理?」

「ちゃんときてんの?」

「…………っ」



言われてみれば、予定日とっくに過ぎてる。


いつも予定日はズレないのに……。



「どうしよ……」



私まだ高校生だよ?


それに、桐生さんが知ったら何て言う?


頭の中が真っ白になった。



「まだそうと決まったわけじゃないし、とにかくハッキリさせよ?」

「でも……」

「私、検査薬買ってくるね」



そう言って明日香はバタバタと着替えて出て行ってしまった。


私は明日香が出て行ったドアをただ呆然と見つめていた。


まだいるかも分からない赤ちゃん。


けど、お腹に手を当てると無性に泣きたくなった。


明日香が出て行って静かになった部屋。


あまりにも静かで怖くなった。


久しぶりに味わう心細さ。


母親が家を出て行った時のことを思い出した。


あの時もこんな風に心細くてしかたがなかった。