魅惑の果実

「莉乃ちゃんは彼氏いるの?」

「へ?」

「あはは、ごめん、つい聞いてみたくなったから」



ビックリした。


今までそんな感じの事を聞かれた事がなかったから、間抜けな声が出ちゃった。



「彼氏なんかいませんよ」

「この仕事だとそう答えるしかないよね」



確かに、居たとしても素直に居ますなんて言うキャバ嬢はいないだろう。


でも私の場合本当にいない訳で……本当にいない時はどういう風に言えば伝わるんだろう。



「信じてもらえないかもしれないですけど、本当にいませんよ」

「信じるよ。 莉乃ちゃんは嘘付ける子じゃないからね」



お酒の所為で、いつもよりも色気を含んだ小西さんの目と視線がぶつかる。


このお店に入るために高校中退してる事にしてる時点で、私は大嘘付きなんです……とは言えなくて、私は笑って誤魔化した。



「莉乃ちゃんの顔も見れたし、今日はもう帰るよ」

「え!? もう帰っちゃうんですか!?」

「また近い内に来るよ」

「淋しいけどしょうがないですよね……」



小西さんがチェックを済ませ、私は見送るため一緒にエレベーターに乗った。