魅惑の果実

拭った筈の涙が馬鹿みたいに溢れ始めた。



「っ……」



桐生さんは箱から指輪を取ると、そっと私の指にはめてくれた。


左手の薬指に光る指輪。


サイズもピッタリで、余計涙があふれた。



「なんで……っ、サイズ……」

「指だけじゃない。 お前の腕も足も、全て知っている。 お前の身体で分からないところなど一つもない」



桐生さんの首に腕を回し、ギュッと抱き着いた。


幸せ過ぎて、どうすればいいのか分からない。


言葉にならなくて、ただ涙だけがこぼれていく。



「相変わらずの泣き虫だな」



耳元に響く低い声。


髪の毛をすくように頭を撫でてくれる大きな手。


与えられる全ての事が嬉しくて、泣かずにはいられなかった。



「桐生さんといる時だけっ、だから……いい……っ」

「そうか」



この穏やかな時間がずっと続けばいいと思った。


ずっと……。


私たちはすれ違ってきた時間を埋める様に互いの熱を求めた。


熱が冷めてしまわないように、何度も……。


気を失ってしまう程に。