魅惑の果実

フロアに戻ると、小西さんが一人で席に座っていた。


女の子は座っていない。



「小西さん、いらっしゃいませ」



小西さんは顔をあげると笑顔を向けてくれた。


珍しく酔っ払ってる。


隣に腰掛け自分のお酒を作った。



「ご一緒頂きます」

「あぁ、乾杯」



元気ない?


どうしたんだろう……。



「いらっしゃってるとは思わなかったので、ビックリしました」

「迷惑だったかな?」

「まさか! お会い出来て嬉しいです」



桐生さんに私の想いは届かない。


咲さんと桐生さんは凄くお似合いだと思う。


そう思ってしまう自分が嫌で辛くて堪らない。


だからかな……以前よりも小西さんに寄り添ってしまいたい衝動に駆られる。



「ご連絡下されば良かったのに」

「たまには驚かせたくてね」

「とっても驚きましたよ。 今日はゆっくりできるんですか?」

「今日もそんなに時間はないんだ。 けど、莉乃ちゃんの顔が見たくて気付いたらここに来てた」



少し前の私なら、小西さんにこんな事を言われたらころっといっていただろうな。


でも今は桐生さんの事が頭から離れない。