事故で……。


あっ……そういえば……。



「お店で元気なかった時って……」

「あぁ、あいつの命日で墓参りに行った日だ」



そうだったんだ。


亡くなってだいぶ経つのに、今でも大切に思ってるんだな……。


もういない女性……それでも妬いてしまうのは私の心が狭いのかな。



「彼女は母子家庭で、母親は重い病を患っていた。 高校に通いながら毎日バイトをして家計を支え、まだ小さい妹の面倒までみていた。 その妹が瞳だ」

「咲、さん……?」

「あぁ。 彼女が大学に進学して直ぐに母親は他界し、今度は彼女がいなくなった。 精神的に不安定になった瞳の面倒をみていた名残が、まだ今でも残っている。 美月の言う通り、瞳の気持ちには気づいている。 だが、勘違いをさせる素振りを見せた事は一度もない」



言葉が見つからなかった。


ただ、何故だか涙が止まらなかった。


桐生さんに腕を引かれ、抱きしめられた。


広く逞しい胸から伝わってくる胸の音。


そして体温。


胸がギュッとなった。