お店のトイレで散々泣いたのに、性懲りもなくまた涙が出てきた。


泣きたくなんかないのに……。


俯いていると、頭を撫でられた。



「写真は何処にあった?」

「……書斎」

「書斎に入ったのか?」

「入った……ダメ、だった?」

「いいや。 お前が書斎の本に興味を持つとは思わなかったから、少し驚いただけだ」



本には一切興味なんてない。


どれも意味分かんなかったし。



「あいつの写真は全て捨てたと思っていたんだがな」

「……元カノ?」



声が震えた。


あまりにも桐生さんの声が優しいから……急に話をするのが怖くなった。


逃げたしたい。


そんな気分。



「高校から大学卒業前まで付き合っていた」

「……今も連絡とか、取ってる……の?」

「いいや、連絡も取っていないし会ってもいない」



ホッとした。


今も繋がりがあったら取られてしまいそうで、気が気じゃない。



「会ってはいないが、会いには行っている」

「え……?」



それってどういう意味?



「大学四年の時に彼女は事故で死んだ。 今は年に一度墓参りに行っている」