魅惑の果実

大人で落ち着いてて、色気があって、逞しくて品があって……でも意地悪で……。


どんどん桐生さんの魅力に引き込まれていく。


それなのに私は桐生さんの事なに一つ分かっていない。



「桐生さんは普段どんなお仕事してるの?」

「ただの経営者だよ」



いつも深くまで踏み込ませてもらえない。


その度に距離と壁を感じて、思い知らされる。


私達は客とキャバ嬢でしかないんだって……。



「桐生さんっ!!」



ドアが開き、今日も華やかな咲さんが満面の笑みで桐生さんの隣に座った。


桐生さんの膝の上に手を置く咲さん。


私も触れたい……もっと側に行きたい。



「桐生さん、ご馳走様でした」



でもそんな事は無理だって分かってる。


だからせめてこの想いを誰にも悟られない様に、笑顔を浮かべるの。


なるべく二人の姿を見ない様にと足早に部屋を後にした。



「莉乃、小西さん来てるよ」

「小西さんが?」



携帯を見るが、小西さんからの連絡はなかった。


いつも来る時は必ず連絡くれるのに珍しいな。