魅惑の果実

抱き抱えられたまま、まんまと寝室に連れてこられた私は、素直にベッドの上に降ろされ、覆い被さる桐生さんを見上げた。


両手を伸ばし、桐生さんの顔に触れた。


鋭さを秘めたこの涼しげな目元が好き。


サラッと毒を吐くこの薄い唇が好き。


顎から肩にかけての滑らかな首筋も好き……全てが好き過ぎて、どうしていいのか分からない。



「桐生さん……好き……大好き……」

「あぁ、俺もだ」

「ちゃんと言ってくんなきゃ分かんない。 言ってよ、好きって……」



おねだりすると、しょうがないとでもいうような笑みを浮かべた桐生さんが口を開いた。



「美月、好きだ」



唇が触れ合い、どんどん激しさを増していく。


甘い言葉に甘い口付け。


涙が溢れた。


でもそれは、嬉しくて流れたんじゃない。


あまりの切なさに胸が張り裂けそうだったから……。


桐生さんに好きだって言ってもらいたかった。


でもそれは、私が何も言わなくても言ってもらいたかった言葉。


私が催促して貰うのと、桐生さんの意思で貰うのとでは、あまりにも意味が違いすぎる。