魅惑の果実

広々としたリビングは不気味なほど静かで、落ち着かなかった。


見渡せる夜景も今は寂しく感じる。


私はソファーに座ってテレビを点けた。


テレビがついた瞬間、大きな笑い声が部屋に響き渡った。


有名なお笑い芸人が司会をしているバラエティー番組。


色んな芸人が集まってワイワイ騒がしくて、客席の人はみんな笑っているのに、私は少しも笑えなかった。


お笑い好きなんだけどな……。


こんなに沈んでる事が馬鹿らしくなるくらい笑かして欲しい。


桐生さんは笑いたくなる事とかないのかな?


こういう番組も見そうにないし……。


私と居て楽しいと思ってくれてるのかな……。


ソファーに寝転がり、大きなテレビを見つめた。


翔……真剣な顔してたな……。


悪いけど、あそこまで本気でおもってくれてるとは思ってなかった。


翔は私に「好き」って言葉をくれる。


正直嫌な気持ちにはならない。


それでもやっぱり桐生さんが言ってくれればと思ってしまう。


世の中って本当に上手くいかないんだな。


家族も勉強も恋愛も……どうしてこんなに難しいんだろう。


救われてる事と言えば、友達関係が上手くいってる事だけ。


それ以上の物を望むのは、贅沢な事なのかな?