魅惑の果実

怒りのせいなのか、悲しいせいなのか、分からないけど凄く胸が痛くて苦しい。


目頭が熱くなるのを感じて、膝に顔を埋めた。


泣いてるって気付かれたくなくて、一生懸命歯を食いしばって、嗚咽を我慢した。


こんなに誰かに嫉妬してしまうのは、子供だからとかそんなの関係ない。


私は幾つ歳を取ろうと、桐生さんを好きでいる限り、桐生さんに近付く女たちに嫉妬する。


ムカつくくらい好き。


桐生さんに背を向けて立ち上がると、腕を掴まれた。


高鳴る心臓。


強張る身体。


腕から伝わる温もりは、胸の痛みを大きくする。



「シャワー浴びてくる」



桐生さんの手が少し緩み、私は振り払った。


桐生さんの顔を見ずにバスルームへ向かった。


見なかったんじゃなくて、見れなかった。


バスルームに駆け込み、子供みたいに洋服を脱ぎ捨て、いつもより熱めのシャワーを浴びた。


シャワーのお湯を顔に浴びながら、涙と一緒に情けない声が漏れる。


とにかく今は泣けるだけ泣いてしまいたかった。