魅惑の果実

気付かないようにしてた。


だからなのか、翔の言葉に予想以上に傷ついている自分がいる。


っ!?


翔に手を握られ、心臓が飛び跳ねた。



「俺の事、ちゃんと見てほしい」

「何言って……」

「こんなに好きになったのも、誰かに好きになってもらいたいって思えたのも初めてなんだ。本気で美月の事が好きなんだ」



カッと体が熱くなって、不覚にも涙が溢れた。


今思えば、桐生さんに「好き」って言われた事ない気がする。


言葉はなくても、行動でしめしてくれればって思ってた。


だけどそうじゃなかった。


やっぱり言葉にしてくれないと拭えない不安もあるんだと、今身にしみて感じてる。



「悩んでるところに悩み増やしちゃってごめんね」



首を横に振ると翔はそっと微笑んだ。



「翔、あり……」



テーブルの上のケータイが震えはじめ、名前を見て固まった。


桐生さん……。



「っ!? 翔!?」

「出なくていいよ」



翔の手の中で震えるケータイ。


奪おうと思えば簡単だった。


でも体が動かなくて、気付けば震えは止まっていた。