外にいる時もちょいちょい電話掛かってきてたな……。


仕事の電話かな?


電話の時の桐生さんは表情が変わらないから、相手が誰なのか、どういう内容なのか分からない。


殆どが仕事関係っぽいけど。



「今何処にいる」



っ!?


睡魔に襲われてフワフワしていたけど、聞いたことのある声が聞こえて意識がハッキリとしていく。



「そこでおとなしくしていろ」



え……?


行っちゃうの?


頭を上げると、桐生さんがソファーから立ち上がった。



「直ぐに戻る」

「桐生さん……っ、何でも、ない……行ってらっしゃい」



桐生さんは私のおでこにキスをすると、車のキーを持って部屋を出て行った。


気付けば涙が零れ落ちていた。


行かないでって言いたかったのに、言えなかった。


何で行っちゃったの?


ねぇ……、咲さんとはどういう関係なの?


その日、桐生さんが帰ってくるのをずっと待ってたけど、中々帰って来なくて、私は寮に帰る時間になってしまった。


桐生さんに“帰るね”ってmailを送ったけど、返事が返ってくる事もなかった。