魅惑の果実

車内に沈黙が流れる。


私は桐生さんにもしもの事があったら間違いなく大泣きだよ。


顔がグチャグチャに腫れ上がるまで泣いちゃう。


きっとどうすればいいのか分からなくなる。


赤信号で車が止まり、切れ長の桐生さんの目と視線が絡む。


頭を抱き寄せられ、口を塞がれた。



「ん……ふっ……っ」



荒々しい口付け。


だけど、愛を感じた。



「き、りゅ……さっ……」

「お前にもしもの事などあり得ない。 俺がいる」

「……うん」



桐生さんと手を合わせ、指を絡めた。


腕に頭を寄せて、擦り寄ると手を強く握ってくれた。


幸せ。


今はその言葉しかない。



「桐生さんにもしもの事があったら、私生きていけないからね。 ちゃんと分かってる?」

「そうだろうな」

「分かってるならいい。 何処にも行かないでね」

「あぁ」



やっぱり好きだな……。


桐生さんが思ってる以上に、私は桐生さんの事が好きだと思う。


一度覚えた温もりはもう忘れられない。


手放せない。


だから、この温もりを愛しくも思い、怖くも思う。