魅惑の果実

んっ……。


こめかみ、耳、首筋へと桐生さんの唇が触れていく。


ヤバイ。


湯舟に浸かってる時よりのぼせそう。



「き、桐生さ……っ」

「お前のその顔は本当にそそられる」



ふと鏡を見ると、私の顔は真っ赤になっていた。


少しはだけたバスローブから覗く肌もほんのり赤く染まっている。


ちょっ、恥ずかし過ぎる!



「桐生さんっ、ヤ、ヤダ!!」

「っ、可愛い奴。 リビングで待ってる」



余裕の笑みを浮かべた桐生さんは、何事もなかったかのように出て行ってしまった。


もしかしてからかわれた!?


洗面台に両手をつき盛大な溜息が零れた。


この短時間でメッチャ疲れた。


体の火照りが引いたら髪の毛乾かそう。


鏡に映る私の顔はまだ赤いばかりか、情けない程だらしない顔をしていた。


何だこの顔。


マジないわ……。


ってかあの人のあの色気なんなの!?


どこで身に付けたの!?


生まれつき!?


よそであのフェロモン全開にしてなきゃいいんだけど……。


油断してたらどっかの綺麗なお姉さんに取られちゃう。


もう……マジ焦る。