魅惑の果実

「大学に行くんだよね?」

「それ以外の選択肢はないからね」



政治家の息子ってだけで、いろんなことを制限されてるんだろうな。


自由にさせてもらえている様で、全て決められている。


道がそれない様に管理されている。



「大学でもサッカーするの?」

「したいけど、どうかな。 俺の態度次第では許してもらえないだろうな」

「お互い大変だね」

「愚痴ったところでしょうがないけど、鬱憤たまったらたまには話聞いてくれよ。 美月ちゃんなら解ってくれそうだからさ」



似たような環境に置かれた私たち。


女の私よりも男の誠治の方が親からの期待は凄いだろうな。



「いいよ。 その代わり私の愚痴も聞いてよね」

「当たり前じゃん」



パーティーでこんなに自然に笑えたのは初めてかもしれない。


退屈で醜悪なパーティーだけど、誠治の存在に救われた。



「オヤジが呼んでるから俺行くわ。 またな」

「うん、またね」



人混みに消えていく誠治の後ろ姿を見つめた。


父親の視線を感じる気がするが、気付かないフリをして暫くその場でボーッとしていた。